ウラシマ物語
ウラシマ物語
―或るニライカナイへの憧憬―
作・鈴木俊一
<登場人物>
暗転の中、セリフのみ。
ブ 「シマコ・・・ウラシマコ・・・シマコよ・・・」
ウ 「はい・・・」
ブ 「それほど帰りたいか?」
ウ 「はい、故郷が懐かしいのです・・・」
ブ 「では、帰るがいい、しかし、もう、すでに千五百年近く経っているぞ・・・。正確には千四百九十九年だ・・・」
ウ 「千五百年!三百年の間違いでは?」
ブ 「テレビの見すぎだ。今年は雄略天皇の治世22年、西暦に直すと、478年だ」
ウ 「千四百九十九年後とはつまり・・・」
ブ 「1977年だ!」
ウ 「そ、そんな・・・」
ブ 「お前はヒの一族、お前の子孫もまた、「火」を扱うことになろう・・・。しかし、その「火」は我々には制御し得ぬ火・・・。この世が生まれた時に近い火、なおかつ、神でなければ取り扱えぬ火だ・・・。天上に輝く火・・・。悠久の時を越えて、とこしえに続く不滅の火・・・」
ウ 「そんなものが人間に扱えるのでしょうか?」
ブ 「(皮肉っぽく笑う)扱えぬ、持て余しておるわ・・・。さあ、行くがいい、お前がその世に生まれることは、太古の昔から決まっていたのだから・・・」
ウ 「なんと!」
ブ 「お前は永遠に続く人間の営み、歴史にその都度現れては消え、消えては現れる、アートマンだ」
ウ 「アートマン・・・」
ブ 「わたしはブラフマンとしてお前を見つづけよう・・・。さあ、いくがよい・・・」
明転。
老教授 「日本で初めて原子力の火が点ったのは茨城県東海村・・・。1977年四月、高速増殖炉実験炉「常陽」熱出力10万キロワット。臨界達成・・・」
A 「早口言葉!」
B 「脱原発宣言!脱原発宣言!脱原発宣言!」
A 「おいおい・・・そんなんで、山形のTEAM NACSを目指せるのか!次、行くぞ!チェルノブイリスリーマイル島原発事故!チェルノブイリスリーマイル島原発事故!チェルノブイリスリーマイル島原発事故!」
B 「福島第二原発三号炉再循環ポンプ破損事故!福島第二原発三号炉再循環ポンプ破損事故!福島第二原発三号炉再循環ポンプ破損事故!」
A 「なにやってんだ!(殴る)山形の大泉洋を目指すんだろ?女なのに洋(よう)?・・・。(照れ隠しぎみに)ヨーシ、次行くぞ!美浜原発二号炉ギロチン破断事故!美浜原発二号炉ギロチン破断事故!美浜原発二号炉ギロチン破断事故!」
B 「動燃東海再処理工場爆発炎上事故!動燃東海再処理工場爆発炎上事故!動燃東海再処理工場爆発炎上事故!(間)結構、しんどいっすねー。他にもあるんですか?」
A あるよ、まだまだ・・・。
B きびしっすねー。
暗転。 (SE)ザザーンと波が打ち寄せている。
ホリゾント一杯に、原発の煙突が立っている。
青年が打ち寄せられている。(青年にサスが当てられたまま、溶暗)
明転、おっさんが立っている。
業者 「よく来たね。途中、迷わなかった?まあ、大体の場所は地図に書いてたけどね・・・」
ウ 「・・・」
業者 「・・・そ、ま、あんまり、気を張らないで、ね、原発の仕事なんてのは、別段、その辺の仕事とそう、大差ないから、気楽にやってりゃ良いよ、ま、だいたいが、雑巾で放射能を拭き取る、軽作業が中心になるとは思うけど・・・も、もちろん、防護服は着るよ、被爆しないように。ほら、いま、うるさいからね・・・」
ウ 「あの・・・」
業者 「ん、なんだい?」
ウ 「ホントに、そんなに給料貰えるんですか?」
業者 「ああ、ははは・・・疑ってたのか。通りで、無口な訳だ。は、は、は、あ、ゴメン、いや、大丈夫、それは、請合うよ、何しろ日本国の仕事ですからね、極端な話、日本がぶっ壊れない限り、大丈夫だよ。ん、大丈夫、大丈夫。(・・・しかし、暗え野郎だな・・・大丈夫か?)」
ウ 「え?」
業者 「いやあ、なんでもないよ、どれ、メシでも食いに行くか・・・」
(ヤンボーマーボーの音とノリ)
カイザン・インペイ 「カイザン!インペイ!○○○○!」
亀を連れて来て、虐める。
カイザン ぼくの名前はカイザン♫(殴る)
インペイ ぼくの名前はインペイ♭(蹴る)
カイザン・インペイ ふたりあわせてネツゾウだ♬きみとぼくとで騙しきれ♫
カイザン・インペイ 小さな事故から大きな事故まで、
カイザン・インペイ ふたりで隠せば国民安心♪
ウラシマ 好い加減にしろ!
こそこそと逃げる、二人。
亀 「ありがとう・・・お礼に連れてってあげる・・・」
ウ 「へっ?どこへ?」
亀 「ふふふ・・・」
ウ 「こ、怖いなぁ・・・」
亀 「おめえの名前はウラシマ。俺の名前は亀次郎・・・。♬助けた亀に連れられて・・・行く先は・・・」
ウ 「 ・・・りゅ、竜宮城?」
亀 「はい、ゴメイサン」
ウ 「でも、竜宮城なんてどこにあるんですか?」
亀 「いひひひひ・・・」
ウ 「怖いって、だから!」
亀 「ま、ま、ついで来いって・・・」
乙姫、待ってましたとばかりに、現われる。
乙姫 「いらっしゃーあい・・・キャバクラ竜宮城へ、よ・う・こ・そ♡」
亀 「おっ、今日も頼むわ」
乙姫 「あら、新しいお客さんね、可愛いわぁ・・・」
ウ 「ぼ、僕、帰ります」
乙姫 「なんで!」
ウ 「乙姫様はどこにいるんですか!(結構、切実)」
亀 (お絞りを受け取り、顔を拭きながら)「なんだ、やっぱり、期待してたんじゃない」
ウ 「そ、そりゃあ、期待しますよ、竜宮城に来たんだもの、竜宮城って言ったら、やっぱ、乙姫様でしょ?」
乙姫 「あたしが、乙姫様です」
ウ (決然と)「帰ります」
乙姫 「なんで」
ウ 「なんでって・・・」
乙姫 「あら、あら、あら、(わざとらしく)ちょうど、これから、ショータイムの時間だわ」
亀 「んだから、来たんだベよ・・・。いひひひ・・・」
乙姫 「この、エロジイジイ!」
(二人、いやらしく、笑いあう)
ウ 「ショウタイム・・・。この魅惑的な響き・・・しょうたいむ・・・この、ガラスの少年の心をくすぐるこの甘美なワード(単語)・・・ショウタイム・・・」
亀 「まだ、いるね」
ウ 「(顔赤らめた)・・・はい・・・」
亀 「そうそう、正直が一番だ!」
乙姫 「んじゃ、ショータイム!」
亀 「んじゃ、さっそく着替えねど!(さっそく、ズボンを脱ぐ仕草、しかし、絡まって、片足、ケンケン状態)」
ウ 「って、なんで、あんたが着替える?」
乙姫 「おっ、あたしもきがえねど!(こちらも、ケンケン状態だ!しばらく、二人で、ケンケン状態が続く)」
ウ 「ああー、あんたもだ。ブールータス、あんたもが・・・(勝手にやるがいいさ、みたいな)」
乙姫 (間)「あたし、ブスじゃないわよ・・・。(ケンケン止め、真顔)」
ウ 「(溜息をつき、じっと、乙姫を見た)・・・」
亀・乙姫 「イッツア・ショウタイム!」
亀 「危なくないなら、東京に原発造れ!て言ったって、物事って言うのはさ、数の論理で、決まるわけだから」
乙姫 「じゃあ、国民投票すれば、どうでしょう?」
亀 「なに?」
乙姫 「だって、東京の人口は一千万でしょ?つまり、東京以外に住んでる、ほかの地方の人たちは一億二千万いるんだから数の論理で、東京に原発造れるじゃん!」
亀 「・・・なるほど・・・」
乙姫 「東京以外の人間がみんな、国民投票で、東京に原発造れっ!っていったら、できるわけでしょ?」
亀 「そりゃ、そうだ・・・」
乙姫 「造りましょ、東京に」
亀・乙姫 「東京原発ゴー!」
総理大臣(父)・息子 「ショート・タイム・コント!総理大臣と原発に勤めてる息子との会話」
父 「どうして、原発に勤めちゃうかな・・・」
息子 「だって、危なくないんでしょ?」
父 「そ、そりゃあ、危なくないよ」
息子 「じゃあ、いいじゃん」
父 「今の言葉は総理大臣として、体外的な言葉、つまり、建前。判るだろ、大人なんだからさ・・・察してよ、ちょっと・・・」
息子 「じゃあ、本音は?」
父 「(もの凄い勢いで)辞めなさーい!今すぐに、そんな、危ないとこ!」
息子 「ほーら、危ないんじゃん・・・」
父 「(言い聞かすように)うそ、危なくないよ、危なくないから、築地に原発造って、その隣に国会議事堂建てたんだから・・・」
息子 「おかげで、刺されちゃうしね・・・さくっと・・・」
父 「そう、築地の人にね。魚の値段が下がるって・・・」
息子 「でも、国会の期日が短縮され、税金の無駄が減ったって、国民は喜んでるよ!」
父 「そう!野党も、ダラダラ反対しなくなったしね・・・牛歩戦術なんつって、野党議員、自分たちが被爆して自分が牛!自分でリアル牛の歩み、一生涯補償牛歩って、馬鹿らしいでしょ!」
息子 「良かったね、お父さん、与党の思う壺だね!自分が被爆しても、与党を巻き添えにしよう、なんて、心意気のある議員、いないんだね・・・」
父 「そりゃ、そうさ、野党も人の子、与党も人の子、暗殺されても政策を貫く、そんな気概のある国会議員なんて、今の世の中、一体、どこにいるっつーの?板垣死すとも自由は死せず!なんつって、なんつって!・・・」
息子、父親をじっと見る。語るに落ちた自分の父親を悲しげな目で。
息子 「(気を取り直し)良かったね!東京に原発造って!」
父 「おおっ!」
息子 「でも、最近、だるいんだよね・・・。んで、体中に発疹が出てるんだよね・・・」
父 「だ、大丈夫か?」
息子 「ん、歯磨いてくるね・・・。あれ、血が止まらない・・・なんか、おかしいよ?血が血が!拭っても、拭っても血が溢れちゃって・・・」
父 「タロウ!」
三十年後・・・。「二世議員に奇形の兆候・・・」
ニュースキャスター(以下「ニ」と略) 「ニュースです・・・。築地に国会議事堂が移転し、三十年が経ちました。三十年前に国会議員だった人々、その二世議員たちに奇形の兆候が顕わています・・・。では、中継です。滝川さん!」
滝川 「はい、クリステルです、国会で居眠りする議員が一人もいなくなりました、これは、放射能の影響の為、不眠症になった為だと言われています・・・」
ニュースキャスター 「30年前の2007年には全く、考えられない事でしたね。そのころの国会は審議中に携帯電話が鳴るわ、居眠りし放題だわ、小学校の学級崩壊な感じの国会でした。ところが、今では、こんなに熱心に国会運営が営まれております。議員の皆様、本当に、素晴らしいですね!」
ニ・滝川 「東京原発ゴー!!!」
A 「棄てられちゃってね・・・」
B 「誰から?」
A 「男から」
B 「わお」
B 「俺も」
A 「誰から?」
B 「会社から」
A 「わお」
C 「私もです」
A 「誰から?」
C 「国から」
A 「え?」
C 「国家です。日本。衆議院議長でした。私が一番被爆したんです・・・。だって、議長だから逃げらんないっしょ?私が休むと、議会停止だもの・・・。た、助けて!」
A 「棄民(きみん)ということだね」
C 「日本という国は国民を利用するだけ利用し、国民を棄ててきたのです・・・。国家繁栄のために民草(たみくさ)を人柱にする・・・。それが、国家という暴力装置の正体です」
一人のサラリーマン、登場。酔っている。
サ 「おっ。おっ。学生?学生?おっ。凄いね。こっちも。ふーん。凄いね。今日は祭りかなんかだ。ふーん。学生祭りだ。学生祭りでワッショイ、ワッショイ。え、やんないよ、だから、やんないって!学生・・・。ほら、やんないから(やってもよい)・・・。(アドリブなど)(37+2は39です・・・小学生か!)いやね、リストラされちゃって、電力会社に。リスがトラック運転・・・。ウェー(吐きそう)いや、大丈夫、大丈夫。(直後)ウェロウェロウェロ・・・。ん、吐いたね。んー、すっきりした。いやー、原因?そりゃあ、原因ありますよ、いい大人がリストラされたんだ、理由ありまさぁー。結局さ、安全より、利益を取ったわけ、会社は。え、俺って、甘いか?ねぇ、目つむってたほうが良かった?じゃあ、瞑ろうか、ん・・・。(目を閉じる、結構長い間)可愛い?ねぇ、可愛い?じょ、冗談だよ、冗談。あっーそう、リストラされた中年男は、目も瞑っちゃ駄目なの?あっ、そう、可愛くならいい?(可愛く尋ねる)あ・・・あっ・・・。満足しました。どれぐらい満足したかと言うと、TUYどよまんの佐々木瞳アナと喋ったくらい。それは、置いといて、だって、さぁ、やばいんだよ、あんなことやってたら、マジ、死ぬ。(自主規制という札を口許に持ってくる)だから、やばいって。佐々木瞳。(自主規制)あんなことやってたら、マジ、やばいって!(段々、自主規制する部分が変わって・・・)俺たち!」
全員 ♬「妄想族(もうそうぞく)、モウソウ!」
サ 「・・・妄想こそ、この世の悦楽にして、社会を見比べ、世界を鏡に写す、真実の行為ではないのか?」
C 「あんたも、棄てられたんだ、会社から・・・」
サ 「おおっ・・・そうだよ・・・わりいか?」
C 「一緒に、同盟しませんか?」
サ 「(かなり訝しげ)・・・何同盟?」
C 「(自信持って)棄てないで同盟!」
サ 「そのまんまだ・・・そのまんま・・・(ぼそりと)東だ・・・」
C 「(演説文を読み上げる)我々は!国家の横暴を!断罪し、白日の下に晒す事で!人民の覚醒を促す為に此処に集(つど)った!戦前は満州開拓民、戦後は原爆、水俣、薬害エイズ、すべては一本の線で繋がるのだ!」
サ 「やめろ、やめろ、固い、固すぎる!おれたちが出来ることを、おれたちの表現で!」
劇の途中で突然、停電。
A 「ホワッツ?」
B 「なに、どうした?」
C 「おい、照明さーん」
A 「ちょっと、ふざけんなって、ちょっと!」
B 「おっ、演出、どうしたの?」
演出 「原発否定したんで東北電力が電気の供給ストップしちゃいました・・・」
A 「マジ!」
演出 「・・・うっそー・・・」
C 「自主規制・・・か・・・」
演出 「はい!今後、そう言った不測の事態も想定して・・・♪ジャジャジャジャーン!」
火力マン 「火力マン!」
水力マン 「水力マン!」
揚水力ウーマン 「揚水力ウーマン!」
演出 「取り敢えず、わかりやすくする為に、自転車漕ぎで表現致したいと思います!最初は、火力行け!」
火力マン 「おっー!」
演出 「解説します・・・。電力の消費は人々の暮らしとともに変化します。秒単位で。秒単位で!刻々と。はい、ここで、真夏の一日の電力消費の移り変わりを見てみましょう!夜明け前、深夜最小電力を記録。人々が目覚め、活動開始を合図に少しづつ増加、それが、正午までケイゾク。昼休みに入りますと、消費も昼休み、午後一時から、ふたたび、増加、増加、増加!午後2時から午後3時にかけて最大電力を記録!(学生にふる)小学校で、昼の2時が一番暑いって習ったでしょ?真夏の平日では最大電力は深夜の最小電力の二倍以上!その後、少しづつ減少、深夜も減少、そして未明にふたたび深夜最小電力を記録します。(これを火力マン、自転車で表現、演出は随時、火力マンに突っ込みを入れながら解説)・・・火力マン!大丈夫?」
火力マン 「▇☸♘♒♠♟。(無言で睨んでる)」
演出 「火力マン、大丈夫かな?じゃあ、みんなで火力マンの名前、呼んでみようか?(アンパンマンショーのノリ)か、りょくー、まーんーーーー!みんな、元気が足りないぞ♡か、りょくー、まーんーーーー!」
火力マン 「☠♒♎☰♃・・・」
演出 「はい、返事が無いのでね、だいぶ、怒ってますね。うん、しかたない・・・。・・・怖いですね・・・。じゃあ、交代、水力マン、登場!ということで、日本では年間最大電力は真夏の昼2時から3時までの間に記録されることがわかりました。これを「夏のピーク電力」と呼びます。勝手に。この最大電力、夏のピーク電力を供給できる発電設備があれば、原子力発電は要りません。違いますか?エグザンプル!例えば!1999年の夏(ちっちゃく言う)休み、最大電力が1億6400万キロワットでした。頼みの火力と水力の合計は1億5300万キロワット!・・・(ものすごおく驚く)あっ、やべ、足りねえ・・・多分・・・。すいません、1億5300万引く1億6400万は?・・・マイナス1100万・・・。やべ、足りねえじゃん!どうすんの?どうすんの?俺?みたいな・・・。(にやり)やっぱり、原発は必要じゃないですか!みなさん!ごめんなさい!東北電力!ごめんなさい!もうしません!勘弁してください!(土下座)」
揚水力ウーマン 「ふふふっふふっふっふうっふっふっふふ・・・」
演出 「その高飛車な笑い声は、もしや?」
揚水力ウーマン 「あたしのことをお忘れかしらん?」
演出 「あ、あなたは・・・」
揚水力ウーマン 「揚水力ウーマン・・・人はあたしのことをアゲアゲの女、略して「アゲマン」と呼ぶ!」
演出 「キーーーーーーーターーーーーー!」
揚水力ウーマン 「幾ら足りないの?(居酒屋で俺、出す、みたいな)」
演出 「はい、1000万程・・・」
揚水力ウーマン 「しょうがないわね・・・。あたしの設備容量、幾らだと思う?」
演出 「╮☽♛❦✺✔?」
揚水力ウーマン 「素直に聞け!あたしの発電能力は2300万キロワッツ!」
演出 「きゃーあー・・・。貸して、貸して、出して、出し切って!」
揚水力ウーマン (甘い溜息で)「アッ・・・アッ・・・アッ・・・」
演出 「ああっ良かった・・・原発要らないわ・・・」
民電 「ふっふふうふふふふっふふふふふふふうふうふっふ・・・」
演出 「誰?」
民電 「あたしのことをお忘れじゃ無いかしら?」
演出 「あなたは・・・」
民電 「あたしの名前は「民間による新規参入電力事業の潜在的な発電能力」・・・」
演出 「なげぇーよ!尾崎か?尾崎的歌詞か?」
民電 「尾崎を馬鹿にするな!(殴る)」
演出 「ごめんなさい。で、略して、尺考えて!空気読んで!雰囲気読んで!」
民電 「民間電力。民電。(みんでん)・・・」
演出 「あなたの発電能力は?」
民電 「・・・(もったいぶって)(かなり、もったいぶって)」
演出 「そういうの、いいから、もったいぶったりしないで、もったいぶらないで・・・」
民電 「3800万ないし、5200万キロワッツ!ワッツ!ワッツ!」
演出 「キャーーーーーーーーーー。いい、最高、いい!もう、あと、ワッツ、五回く位叫んでいい!大好き、犯して!(バック体勢)それ、貯金しよ、貯めよ、そその余った電力、貯めとこ。(可愛く)ね、いざというときのために!」
全員、自転車漕ぐのを止め、じっと見る・・・。
全員 「(全員で)電気は貯められないの・・・その場限りなの・・・。」
演出 「えっ・・・そうなの?(学生たちを見る)」
ストーンと暗転。
(SE)波の音 明転。
老人 「いやー、おらんだは反対したんだ。この町は漁業の町だ、なにも、漁師だけで食えねぇごどはねぇ、しかし、焦っちまったんだ、毎年、若い衆は出て行く、娘も着飾って出て行く・・・。わかる、気持は、おれもそうだったから・・・。ちょうど、30年前だ・・・」
ウ、乙姫 「・・・」
老人 「んで、地域活性化の為に、原発を建てだ・・・。昔、やってた事と同じ事だと思ったんだ。・・・ト・ホ・カミ・エミ・タメ・・・」
ウ 「なんです?」
老人 「古い、呪い(まじない)の言葉だ・・・ト・ホ・カミ・エミ・タメ・・・遠くにいらっしゃる神様、どうか、お恵みを与えてください・・・」(老人、遠い目で彼方を見る仕草。)
老人 「原発を建てれば、なにもかも、うまぐいぐ、そう思った。お恵みを与えでもらえるど思ったんだ・・・」
乙姫 「どうだったの?」
老人 「どうしたも、こうしたもよ、この通りよ、人っ子一人いねぇ・・・。地元の産業はいっさい育だね、っつうのはホントだったぁ・・・。助平な飲み屋ばり出来でな・・・」(ジロリと乙姫を見る)
乙姫 「え、あたし?」
老人 「あの先生の言う通りだった、馬鹿にして、追い返したもな・・・」
乙姫 「あの先生って?」
老人 「原発問題を熱心に研究してる、つったな・・・」
乙姫 「原発問題・・・」
ウラシマ、着替えて出て来る、伊達メガネ、タートルネック、ジャケットの瀟洒なジジイだ。
ウラシマ(教授) 「皆さん、それほど、電気が必要でしょうか?豊かな生活に憧れますか?原発を建てれば、地元の若者の雇用に繋がり、定住者が増え、人口も増えるでしょうか?答えはノンであります!出るのは産業廃棄物、自然が何万年、何十億年もかけて、綺麗にしなければならない、プロトニウムが生まれるだけであります!原発先進国のフランスでは原発から出る産業廃棄物の処理に悩まされ、わが国、日本の青森県六ヶ所村に頼っています、それが、本当の先進国と言えるのでしょうか?」
老人 「帰れ!よそ者さ何がわかる!原発が危険だぐらい、学校さ行ってない、この俺でもわがんなだ、そんでも原発を呼ばんなね俺んだの気持など、おめさ、わがんのが!わがんのが!わかんねべ!帰れは!帰れ!」
教授、肩を落として帰っていく。
老人 「そして、原発はやって来た・・・。最初はよかっだんだ、それでも・・・毎年、来たんだ神様が・・・電源三法交付金、固定資産税・・・。」
乙姫 「電源三法交付金・・・」
老人 「電源三法交付金て言うのは、原発が営業運転に入るまでに来てくれた神様。固定資産税は営業運転を始めるど、来てくれる神様・・・」
ウラシマ・乙姫 「・・・」
老人 「凄い神様なんだぁーそりゃ、びっぐりするぐらいの・・・儲けた、儲けた・・・。んでもよ、原発の減価償却は16年だからよ、すこしづつ減るんだ・・・」
ウラシマ・乙姫 「・・・」
老人 「いっぱい、施設つぐった、広報無線施設7千754万円、生涯教育センター3億5千245万円、保健センター、消防施設・・・。んでもよ、施設には維持費が掛かる・・・。建物壊さない限りな・・・」
乙姫 「ハリボテじゃないの、ハリボテ、舞台の、次の被害者を騙す、劇団電力会社、原発物語の、舞台装置じゃないの!」
老人 「あっ、芝居終ったんだから、いちろう舞台呼ばねど・・・」
ウラシマ 「だから、また、原発を建てるんですね!」
老人 「はい、ゴメイサン!二号機建てるド、また、神様、きてけっからな。」
ウラシマ 「おなじことの繰り返しじゃないですか!」
老人 「三号機たでねど、神様来てけんに・・・」
ウラシマ 「まるで、麻薬患者だ・・・」
乙姫 「おじいちゃん!やめて!」
老人 「結局、都会のでかい建設会社が根こそぎ仕事持っていくのだ。あとには借金だけが残る・・・びた一文落ちね、この町には・・・変なスケベ店ばり出て・・・」
乙姫 「おじいちゃん!」
老人 「むかしがら、んだなだ、汚い物はみな、地方。そして可愛い娘は都会さ、売りに出されで、残ったのは・・・」
乙姫 「なんで、あたしの顔見る?」
老人 「一生懸命、苦労して出稼ぎまでして金作って、やっとこさ大学出して、結局、都会の男に持ってがれるんだから、昔の身売りと同じだべ!」
乙姫 「おじいちゃん!」
老人 「その借金を地方の男どもは指咥えで、オヤジたちと一緒に汗みずくになって返してるんだもの、世話ねえべ・・・馬鹿でねえべか?」
乙姫 「おじいちゃん!」
老人 「なして、こんな簡単なカラクリ、わかんねなべね?」
ウ 「おじいちゃん・・・」
老人 「今日も、行ぐがらな・・・」(無言でピースサイン)
乙姫 「御願いね♡って、来んな!」
暗転、明転。
バスガイド、町議会議員A、B 「ショート・タイム・コント!原発城下町を視察に来た、町議会議員団とバスガイドとの会話」
バスガイド(以下、バと省略) 「あちらに見えますのが、当市が誇ります、市役所庁舎で御座居ます!」
町議会議員A(以下、町Aと省略) 「おおっ・・・まんず、お城みだいだごどね・・・」
町B 「んだんだ」
バ 「あちらは、市立図書館で御座い居ます!」
A 「おおっ!」
バ 「借りた本を返さない市民に督促する、図書館警察が隣に建っております。民間警備会社で御座居ます、一応、図書館職員で御座居ます!」
B 「いやはー、まず、びっくりだぁー、図書館警察の建物の方が立派だもの、まるで、警視庁(リアル標準語で)みだいだぁー」
A 「いやぁー、原発が町さくるど、こんなに立派な建物建てられるし、若者もいづぐべし、活性化になるべ!原発、やっぱ、建てねど!」
帰っていく議員団。
バ 「はい、帰ったね・・・ほら、撤収、このハリボテ、ばらさないと、いちろう舞台に連絡して」
暗転、SE(波の音) 明転。
ウラシマ 「ああっ・・・ウミガメの群れが・・・」
乙姫 「来ないで!冬の日本海よ!戻れなくなるわ!」
亀 「ああっ・・・やめろ・・・やめてくれ・・・この原発の為に、此れほどの浮かれ甲が来るとは・・・」
ウラシマ 「浮かれ甲?」
亀 「死んだ亀だ、死んで、腹ばいになった亀、それを使って人間たちは、亀卜(きぼく)をする、つまり、占いだ」
乙姫 「古(いにしえ)の中国、殷王朝はカメの甲羅に火箸を押し付け、そのひびの割れ方の様から吉凶を占ったと言う・・・」
ウラシマ 「これほどの浮かれ甲が、亀がいないと、この日本の将来は占えないということか!」
亀 「や、やめろ!来るな、人間なんかの為に、来るな!」
老人 「ト・ホ・カミ・エミ・タメ・・・」
亀 「よ、呼ぶな!」
老人 「呼ぶしかないのじゃ・・・我々は・・・」
ウラシマ 「おじいさん・・・」
老人 「原発が危険?汚い?そんなことはわがってるんだ、あたりまえだべ、そんなごと」
ウラシマ 「だったら、なぜ!」
老人 (胸倉を掴み)「そんでも、でもよ、この町さ、なにある?なにもねえんだ。若者は出でぐべし、娘もいね、ジジ、ババ、ばっかりよ・・・んだから・・・よ・・・原発くればどうにかなると思った・・・神は海からやってくるのだ」
亀 「・・・海から寄ります神は良い神とは限らんぞ・・・」
老人 「んだったな・・・」
乙姫 「悪い神もやってくるのよ・・・」
老人 「ああっ・・・」
乙姫 「原発を研究していたあなたには釈迦に説法ね・・・」
ウラシマ 「な、なんだって!」
乙姫 「さっき、離してた、教授って、オジイサンのことなの・・・」
亀 「もう、嘘つくの止めようよ・・・」
ウラシマ 「教授だったんですか?」
老教授 (突然標準語)「彼には話すなと言ったはずだ。ウラシマ君にだけは・・・」
ウラシマ 「教授、どうして!」
老教授 「原発反対でこの町に来たとき、この町の人々は頑なだった・・・。誰も、耳を貸そうとはしない。なぜなら、正当な理由があった。原発に頼らねばならない理由が。若者は都会に憧れ、人口は減少し、子供も数年間、生まれなかった・・・。子供の笑い声の聞こえない社会を想像してみたことがあるかね?」
ウラシマ 「いいえ・・・」
老教授 「私は旅人だったのだ。この町のことを全く知らない、知ろうともしないよそ者だった・・・旅人とはその町の良い面しか見ない、そして、その町の悲惨さには目を向けようともしないものだ・・・。殺伐としていたよ、この町は・・・。残されたのはお年よりだけ、原発を建てれば、地域産業が潤い、自然と人口は増えていく、そう、考えたのも無理からぬ事だ。私は苦悶した、新しい町に出掛けては原発の危険性だけを訴え、そして、デモに参加し、その町を後にする・・・。同じ事の繰り返しだ・・・」
乙姫 「そして・・・教授は決心をしたの・・・」
亀 「この町に原発を建てよう、そして、本当に地域を活性化するために闘おうと・・・」
老教授 「そして、原発は建った、そして、町は潤った・・・みんな、喜んだ・・・笑い声が満ちた。しかし、何かしら胸が重い・・・何故だ・・・私は浜辺に出た・・・。その夜は原発の集会で公民館に出向いた帰りだ。その夜は、もう一基建てようという意見に固まりつつあった、私はもう、良いだろう、これ以上建てるのはよそう、と、提案したが、みんなは私の話を聞き入れようとはしなかった・・・私は絶望した」
乙姫 「もう一基建てれば、また、儲かる、味を占めたのね・・・」
亀 (茶化して、しかし、それは、節操の無い、人間たちに対するあてつけだ)「こうして、お酒が飲めるのも、♪原発様のお陰です、それ、一基、一基、イッキ・・・」
老教授 「自殺を考えていた・・・恐らくはね・・・」
ウラシマ 「教授・・・」
老教授 「そこで彼に出会って様々な話をした・・・」
亀 「まあ、落ちこんでる様だったんで、竜宮城に連れてったって訳・・・」
ウラシマ 「キャバクラ竜宮城・・・」
亀 「ショータイム!」
ウラシマ 「いいよ、もう、ショート・コントは・・・」
老教授 「様々な話をした、そして、知ってしまったのだ・・・人間の未来について・・・見たのだ、東北の最期を・・・」
ウラシマ 「どうなるんですか?」
老教授 「大変な未来が待っていた・・・」
亀 「高レベル廃棄物キャニスターを貯蔵できる、使用済み核燃料中間貯蔵施設、青森県六ヶ所村第一貯蔵庫の容量は1440本。高レベル廃棄物は、大きさがガスボンベ程度、ほぼ一メートルの高さの容器わずか一本で、97年に東海村の再処理工場で爆発したドラム缶の数百万本分に匹敵する・・・」
乙姫 「日本でこのまま、原発が稼動を続ければ、西暦2027年、青森県六ヶ所村に届けられる、高レベル廃棄物キャニスターの御歳暮は・・・」
老教授 (後ろを向いて、振返る、妙なポーズで)「北海道電力様から、1057本お届けにあがりました。ここにサイン下さい」
亀 「いきなりが、ま、いいが、まだ、余裕あっから・・・」
乙姫 「東北電力様から、1212本、北陸電力様から、491本お届けにあがりました。ここにサイン下さい」
亀 「ちょ、ちょっと、まった、置ぐどこねえがら、ちょっと、まってけろ・・・」
学生1 「東京電力様から、1万5084本お届けにあがりました。ここにサイン下さい」
亀 「東京は東京で処分しろじ!」
老教授 「そんなこと言っても、六ヶ所村さん、おたくで、預かるって決めたんだから・・・」
亀 「そりゃそうだけど・・・」
学生2 「中部電力様から、3145本、関西電力様から、8051本、中国電力様から、1136本、お届けにあがりました。ここにサイン下さい」
亀 「こら、関西バラ!戊辰戦争いらい、俺ら、東北舐めんなず!汚いものばり、押し付けで、娘は持ってぐ、若者もってぐ、たまには金でも寄越したらいいんでねえが!」
学生3 「四国電力様から、1831本、九州電力様から、4720本お届けにあがりました。ここにサイン下さい」
乙姫 「お金、あげたでしょ、中間貯蔵施設に決まった時・・・。お金、何に使ったの?」
亀 「そ、そりゃ、そうだけど・・・でも、九州来たから、もう、終わりだべ、でも、置くどごねぇず・・・。どうすんなだ、これ・・・」
学生4 「日本原電様から、2411本お届けにあがりました。ここにサイン下さい」
亀 「な、なんだず、日本原電って、なに?」
乙姫 「ほら、サインなら、あたしの(ボイン)で・・・」
亀 「だ、出すなず、出すなず・・・」
老教授 「合計、3万9138本、きっちり、受け取って頂きやす・・・」
乙姫 「遠慮しないで・・・ほら、ほら!」
ウラシマ 「・・・そう言うことか・・・」
老教授 「地元住民と各電力会社が揉めている時、大地震が起こった・・・」
ウラシマ 「な、なんだって!」
老教授 「青森県六ヶ所村の再処理工場の敷地内には、「f1」、「f2」と命名された2二本の活断層が走っている・・・2027年、12月28日、マグニチュウード7・5の直下型地震が青森を襲う・・・ほんの一瞬・・・青白い閃光がが東北全土を襲い、数百万人の人々が即死・・・その光景といったら・・・」
ウラシマ 「や、やめろ・・・もう、いい・・・」
乙姫 「でも、未来は変えられるわ、一人、一人が目を覚ますこと、そして、学ぶこと・・・」
亀 「学び始める事、考え始める事、それが大切なんだよ」
老教授 「私は確信した、机上の空論を振り回し、研究室に篭って世界を見るのではなく、町に出、農村に行き、人々と一緒に、働き、泣き、笑い、食べ、そして、酒を酌み交わそうと・・・ここには、今まで得られなかった、大切な物がものがある、人を思い、思われる心です・・・相思相愛という言葉がある。」
ウラシマ 「・・・」
老教授 「・・・だが、この土地に住み続けると、自分自身で決めた事なのに、何故か、まだ、思い切れなくて・・・。やはり、大学に未練があったのだろう、学会に出掛ける同僚たちが眩しかった・・・」
亀 「結構、ダダこねていたね・・・」
乙姫 「いいのよ、その為の飲み屋なんですからね・・・」
亀 「良いダダだったよ・・・」
老教授 「ははは・・・有難う・・・(涙ぐんでる)この30年間、わたしは、何度も、何度も、眠れぬ夜を過ごした・・・思うに浦島太郎は、一人取り残されたと言う絶望感に苛まれ、玉手箱を開けたのではなく、むしろ、300年という時を、両親や故郷の人々と伴に生きることが出来なかった過去を慈しみ、玉手箱を開けたのだ。そうだ、わたしがこの土地で30年過ごした事は無駄だとは思っていない、良い人生だったよ・・・ウラシマ君」
ウラシマ 「はい」
乙姫 「教授、あなたは塩土老翁(しおつつのおじ)なの」
老教授、優しく微笑む。
ウラシマ 「シオツツ・・・え?」
亀 「塩(しお)の土(つち)の老(ろう)翁(おきな)と書いて、塩土老翁と読む。浦島太郎は玉手箱を開けたことによって、ただの老人になったのではない、塩土老翁と言う、仙人になったのだ。塩土老翁(しおつつのおじ)は塩造りを古代の人に教え、火を伝え、技術を伝えた・・・。今で言えば、スーパー技術者だな」
老教授 「玉手箱を開ける勇気を持とう。人は老いを恐れる、死を忌み嫌う・・・。確かに、体は日々衰えていく・・・。しかし、それを補って、余りある事がある。精神だ、心の働きだ・・・脳の活動さ。知識と経験、それがシナプスのように繋がり、全てを見通す力が生まれる・・・。だから、人に優しくなれる・・・。不老不死など世迷言だ!歳を取ると言うことは素晴らしい事なんだよ、ウラシマ君」
ウラシマ 「・・・」
老教授 「君も何か隠しているな・・・全てを話せば気が楽になるぞ・・・」
ウラシマ 「・・・私は原発を破壊しに来たテロリストです・・・」
老教授 「そうか・・・君は負のアートマンか・・・」
ウラシマ 「ウミガメの産卵を邪魔している原発が憎くて憎くて、下層労働者として潜り込んだんです・・・」
乙姫 「そう・・・」
老教授 「そうか、恵みを原発から受けようとしていた我々人間たちは間違っていた、和多都美(わたつみ)の神、その化身であるウミガメたちを呼ぶ為には、原発を毀(こぼ)たなければならないのだな・・・。港にも砂浜にも、護岸のための突堤(とってい)や消波ブロックが置いてある・・・。これでは、ウミガメたちは産卵のために上陸することができない。門前払いか!」
乙姫 「神よ、海神(ワタツミ)の神よ、海神(かいじん)よ・・・その神の道を原発が塞いでいる・・・」
ウラシマ 「それで、この土地はどうなるのだ!結局、原発と伴に生きることが運命なのですか?ウミガメを殺しつづけるのが運命なのか!どうすれば良いのだ、ウミガメたちが生き続ける方法は無いのか!」
乙姫 「あっ、見て、ウミガメたちが・・・」
ウラシマ 「ああっ・・・ウミガメたちが帰っていく・・・しかし、何故だ・・・なんだ!あの蒸気に彩られた潮の流れは?」
老教授 「・・・シオの流れ・・・なるほど、そうか!原発が垂れ流す、温排水の潮流に乗って、帰っていくのだな・・・」
乙姫 「温排水?」
老教授 「原発とは非常に効率の悪い、エネルギーシステムなのだ、装置を冷却する為に、海水を引き入れ、海に汚れた排水を流している・・・。当然、その排水は放射能で汚染されている・・・」
乙姫 「そう・・・あの暖かな潮流は原発が垂れ流す、汚水だったのね・・・」
ウラシマ 「ああっ・・・浮かれ甲にならずに済んだな・・・。人間なんかのために、死ぬな!」
亀 「夏に豊富なエサを求めて、日本海にやってきた我々、ウミガメは秋から冬にかけて、南洋に抜け出せないまま、水温低下とともに体が弱る・・・そして、北風に吹かれて、打ち上げられるのさ・・・」
ウラシマ 「(とまどって)皮肉だな・・・。破壊を目論んだ原発に助けられて、ウミガメたちが無事に帰っていくとは・・・」
乙姫 「冬の日本海側はウミガメにとって死の袋小路・・・だから、原発の排水は我々にとって、暖かな、潮の流れ、生きて戻る為の道標であり、ライフラインなのです・・・。排水を流してくれた人間たちにとても感謝しています・・・」
ウラシマ 「ですが、それが、もとで、あなた方は被爆したんじゃないですか!」
亀 「被爆することを取ったんだ、生きるために!」
乙姫 「それは、あなたと同じ選択よ・・・」
ウラシマ 「!」
乙姫 「原発を破壊するために、生きるために、原発ジプシーになったあなたの選択と 一緒なんです・・・」
ウラシマ 「ボクは仕方がなかった、テロリストになるにはここに来るしかなかった・・・ボクにとって、生きることとはテロリストになることだった・・・。しかし、ウミガメたちは違う、なにも日本海に来る必要はない!放射能に冒されてまで!」
亀 「人間のために、我々、ウミガメはやって来たのではない、人間よ、思い上がるな!それは生命を繋ぐ行為・・・子孫を残す為の生物のかけがえの無い生命(いのち)のリレーだ・・・。海水浴に来た観光客が捨てていく、夢の残骸を我々はエサと勘違いして食べ続ける・・・。生きるために・・・。発砲スチロール、絡まった釣り糸、魚網、プラスティックの破片、紙切れ、ゴム片、軽石、砂利、鳥の羽毛、ストロー、木屑、貝殻、ビニールシート、ペットボトルのキャップ・・・。白くて小さいのは、みんな、イカに見える・・・。だが、我々は食べ続ける・・・命を繋ぎ、遺伝子を未来に運ぶ為に・・・。そう、我々は進化の途上にある、もしかすると何億年か後には、ストロンチウム90、ヨウ素129、プルトニウム239・・・。人工放射能の中でも生きる、新たなウミガメの種類が生まれるかもしれないのだ・・・」
老教授 「それは人間とて同じ事・・・。5億6千7百万年後の世界・・・。彌勒菩薩の世に・・・。新たな人類が誕生しているかもしれない・・・。海からの恩恵、ウミガメの到来を心待ちにする古代の人々と海にゴミを捨てる現代人・・・(皮肉まじりに)なんと、素晴らしい、現代人の教養であることか!・・・遠津神笑麻世給辺・・・」
ウラシマ 「・・・遠くにいらっしゃる神様、どうか、お恵みを与えてください・・・か・・・」
乙姫 (弱々しく)「これからどうするの?」
ウラシマ 「ようやく、世の中のからくりが見えてきたように思います。気付いてしまったんだ、世の中の矛盾に。どうして、みんな、学ぼうとしないのか?一生懸命働いた後、NHK特集見る?NNNドキュメント見る?みねーべ!ビール飲みながら、馬鹿番組見たいべ、普通はよ!ほんねが!働くことは美徳だ、勤労は国民の義務、働かざるもの食うべからず!旧ソ連共産党か?国民の三大義務?嘘だ、真っ赤な嘘だ!あれも欲しい、これも欲しい、あの車が欲しい、あのドレスが欲しいって、テレビから怒涛のように垂れ流すコマーシャルで煽るだけ煽って、男も女も、着飾って、外側だけ美しぐなれば良いって、結局、人間を動物以下にする政策だ!国民は資本主義の奴隷、国民はただ働いていれば良い、馬みたいに!働いて、働いて、働いて、過労死・・・。国家の為に死ね・・・。資本主義にネツゾウされた夢を叶える為、一生懸命仕事をし、家に帰ったら、考える余裕もなく、泥のように沈黙し、眠るだけ・・・。これが、国のやりかただ!一生懸命働いて、文句、言わねで税金を滞りなく納める従順な羊を造りたいだけだべ、国は。ほんねなが!みんながあえて避けて通る問題・・・。僕はこのことを演劇で表現できないか、そう、思っています、劇団を作ります、劇団の名は・・・」
乙姫 (寂しそうに)「・・・そう・・・」
老教授 「教訓は生かされるのか?歴史は繰り返すと言う・・・。同じ過ちを繰り返すことが歴史だと言わんばかりに・・・。失敗を研究することで、そこから教訓を学び取ろうとはしない人間たち・・・。そんな時代に押し潰されながらも、我々は次の生命に命を繋ぎ、悠久の時の流れの間(ま)に間(ま)に微笑みながら消えていく・・・。しかし、しかしだ!同じ悲しみが繰り返されないよう、願ってやまない・・・。老人や子供、弱き人々が泣かなくてすむような社会、それを造らねばならない・・・」
亀 「ようやく、進歩だろ、そう考えただけでも・・・。そこからだ、まずは・・・。まず、始めなければ・・・」
最後の曲、フェードイン。
ウラシマ 「ニライカナイ・・・。常に変わらぬ永久不変の国。滅せぬ国・・・。それはつねに変わらぬ陽・・・。常陽・・・。日本人は願いを込めて、常陽に、人間の英知を込めて、原子力の火をともした。しかし、それは、英知というよりはHなことではなかったか?いやらしい、人間には不似合いな、過ぎたることではなかったのだろうか?」
乙姫、放射能の影響で折れ崩れる。
亀 「ウラシマ!乙姫様が!」
ウラシマ 「どうしたんだ!」
亀 「時間切れだ・・・」
乙姫 「見えない、見えないよ・・・。有難う、ウラシマ。ウラシマ、どこにいるの?ああ・・・」
老教授 「乙姫は、自らを犠牲にして、高レベル廃棄物キャニスターの搬入を阻止したのだ・・・」
ウラシマ 「な、なんだって!」
老教授 「そのガラス固化体表面の放射線は20秒で生物を即死させる強さを持つのだ・・・わかるだろ、ウラシマコの末裔の君なら・・・この演劇で費やした時間、35分は、乙姫が放射線を浴び、即死するまでの時間、現世の20秒だったのだ・・・」
ウラシマ 「3日だと思っていた、竜宮城での楽しい日々・・・。現世では300年の時が流れていた・・・(ウラシマ、乙姫の手をとり)乙姫、俺はここだ、ここにいるぞ!」
乙姫、盲目の手で、指先で、ウラシマを探そうとしている。ウラシマ、乙姫を背後から素早く、抱き抱え、慟哭し、
老教授 「ウラシマ、君のお陰で、六ヶ所村でデモを環視していた体制側の人間たちにも、原発の危険を訴える芝居をアッピールできた・・・」
ウラシマ (教授を睨みつけ)「劇団なんか、造るもんか、お前といつまでも、ここにいるぞ!ミライコナイ・・・。ニライカナイを望んだ人間たちは、ミライコナイ将来を選択したのではなかったのか?トコヨ!と叫ぶ時、どこよ!と思わず模索し、探してしまう、人間の哀しい性(さが)を見透かしはしなかったか?」
亀 「ウラシマ、乙姫様が現実に放射能を浴びるのは2027年・・・それまで20年ある、劇団を造って、この話を芝居にし、世の中に広めれば、乙姫様を救えるかもしれないのだ・・・だから、劇団を造れ!そして未来を変えろ!ミライハクル!」
乙姫 「ごめんね・・・あなたに伝えたい、ありがとうが見つからないよ・・・」
乙姫、ウラシマを探すのを止め、ウラシマの腕の中で微笑んでいる。
亀 「ニライカナイを心から欲する前に、なぜ、今、いる場所を変えようとしないのか?海のむこうのどこぞの国より、この、今、住んでいる土地に希望を見出さないののは何故だ!海のむこうの知らぬ神より、今、居ます神に、生まれ来たる子供たちに、未来に、希望を託さないのはなぜか?幸福の青い鳥はどこか見知らぬ国にいるのではなく、あなたの隣に住んでいるのではないのか?」
全員で 「幾万のウラシマがいる」
乙姫も、ウラシマに支えられて、立ち上がる。
全員で 「幾万のウラシマがいる」
ウラシマ 「彼らは遠い未来の時代まで傷のついた遺伝子を運ぶのだ・・・」
曲、最高潮になり、暗転。
おわり
①ウラシマ・浦島子・早口言葉を練習している劇団員A・ニュースキャスター・国家から棄てられた衆議院議長(国家から棄てられた男C)・火力マン
②少女・早口言葉を練習している劇団員B・キャバクラ竜宮城のママ、乙姫・インペイ・息子・滝川・棄てられた女A・水力マン・民電・バスガイド
③ブラフマン・原発の曾孫請け業者・カイザン・演出・老人・老教授・町議会議員A
(鈴木俊一)
④亀・総理大臣・リストラされた(棄てられた会社員B)酔っ払いサラリーマン・劇団員C・揚水力ウーマン・町議会議員B